さよならは言わない

その日の夕食は尊が出前を取ってくれたが、私も尊もあまり食欲はなく殆んど手付かずだった。

その後、交代でお風呂を済ませると尊は寝室へと案内してくれたが、今夜は娘と一緒に眠りたいからと私を寝室に置いていくと尊はリビングへと行った。

尊はリビングのソファーに横になると仏壇に飾っている写真を眺めていた。

写真を見るその目はとても熱く、誰もいない暗い部屋で尊は一人涙を流し続けた。

翌朝、目を覚ましリビングへ行くと尊は既に起きていて仏壇の写真を眺めていた。


「おはよう」

「あ、おはよう。ぐっすり眠れたのか?」

「私より尊の方が心配だわ。昨夜は泣いてたの?目が腫れているわ」


尊は罰が悪そうな顔をして顔を隠そうとしたが、尊の頬に触れると顔をそむけさせなかった。

私の方へと顔を動かし尊の潤んだ瞳にキスをし涙で濡れた唇にキスをした。


「絵里、もういい」

「え?」

「そんな気分になれない」


尊にキスを拒まれショックだった。

慰めようとしたけれど、私は尊には偽の恋人だから慰めることは出来ないんだ。

私は尊に求められた時にだけ応じればいいの?

私はその程度の女なのね。


契約上の恋人だから肝に命じろってことよね。

泣きたい気分を必死に堪え私は笑顔で尊のそばにいるしかない?

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