あと5センチで落ちる恋
「総務課に限らずもうすでに女子社員の狙いの的よ。独身でしょ?彼女はいるか知らないけど、争奪戦になると思うわよ」
「争奪戦って…。でもそっか、相変わらずモテてんだ。あ、彼女は多分いないと思うけど」
「え、そうなの?」
すると越智が私のほうをじっと見て、ニヤッと笑った。
「紗羽、お前と一緒」
「なにがよ…あ、すいませんエイヒレひとつ」
「あ、ビールも追加で。みんなは?飲む?じゃあ3つ」
ジョッキをあけてしまおうと、残っていたビールを勢いよく流し込む。
「水瀬課長、お前と一緒で恋愛に興味ないし出来ねえの」
「ぶっ」
思いもよらない越智からの一言にむせ込んだ。慌てて胸元をドンドンと叩く。
すると由紀が楽しそうな声をあげた。
「なにそれ面白い!男前で仕事が出来てモテるのに恋愛が出来ない男!」
「まああの人の場合出来ないっつーより、この上なく面倒なんだと思う。付き合ったりなんだかんだすんのが。昔からそうだったし」
「…だって。あんたはどうなの紗羽」
「…どうって」
越智の言う通り、私はあまり恋愛というものに興味がない。
もちろん、彼氏がいたことだってあるし、そのおかげで幸せだと思う瞬間もあった。
だけどなにかを犠牲にしてまで、たとえば仕事の時間を削ってまで恋愛に時間を費やそうとはどうも思えないのだ。