絶対、また彼を好きにはならない。
冬なのに、あったかい。
拓未に触れられている場所から順番に、じっくり、温もりが増す。
こんなにも幸せな時間があるのかと、窓からの光に目を細め、拓未に体を預けた。
5年間待ち続けた自分を、もう否定したりしない。
拓未はしばらく私をぎゅっと抱きしめ大人しくしていた。
…と思えば、急に私の耳を甘噛みする。
「ちょっと」
かわいい痛みとくすぐったさ。
そしてそのまま私の首筋に、啄むようにキスをする。
「…」
「くすぐったいってば」
そんなことされると、なんとなく鼓動が早くなってしまう。
彼は甘い声で囁く。
「昔から…さやは首弱いよね?」
キスをしながら喋るもんだから、さらにくすぐったい。
5年前と変わらない、甘えん坊なところ。
拓未の唇が私の首筋を這う度、背中がゾクゾクする。柔らかい髪の毛が私をくすぐる。拓未は仔犬のような目で私を試すように見た後、また私の鎖骨に顔を埋めた。
「首筋にキスするのって、本当に好きな人にするものなんだって」
拓未はそういいながら、私の首筋を、また強く吸った。
「昔もそれ言ってたよね?…拓未、そんなとこに付けたら見えちゃう」
吸われた場所がうっ血して、少しだけぴりぴり痛む。
私がそう言うと彼は私から顔を離して、口を尖らせた。
「みんなに見せつけたらいいじゃん、こんなに愛してくれる彼氏がいます、って」
『彼氏』
その言葉に反応して、少しだけ頬が蒸気する。
ついこの間までは絶対に好きにならないと誓っていたのに…自分の単純さを呪う気持ちと、拓未にはやっぱり敵わないなぁという気持ちと、半分半分だ。
拓未はまた仔犬のような目で私を見つめる。
昔から独占欲が強くて、寂しがり屋で、そういうところも好きだ。
昔から付けてくれてた「しるし」が、5年の時を経てまた私の体に刻まれる。
「もう…あの頃と違って仕事してるんだから」
呆れた顔をして、本当は嬉しい。
自分が拓未のものであることが、何よりの幸せだった。
「…じゃあ、俺しか見れないようなところなら、たくさん付けていい?」
彼はそう言ってまた口角をあげた。子供みたいな顔して、言うことは大人である。
「もう…変態」
私がそう言うと、「俺が変態なことなんて昔と変わらないじゃんか」と、反論した。2人でまた笑い合う。
気を抜くと、拓未がまたその行為の続きをしようとするので、「朝からはだめ」と咎め、拓未と体を離し起き上がって、家事を済ませようと歩き出す。
拓未はソファ横に置いてあった毛布を抱きながら、「さや~行かないで寒い~」と、甘え声を出しながら、うとうとしていた。
その姿はあまりにも無防備で、少し笑ってしまう。
時計はもう10時を回っていて、この休日がずっと終わらなければいいのに、なんて考えながら洗濯カゴから洗濯物を出し、洗剤と共に洗濯機に入れる。
1度手を洗ってからリビングに戻ると、拓未はまだ猫みたいにごろごろしていて、私が朝食の洗い物を始めようとすると、
「咲耶それ後でいいって~、俺が後で手伝うから、寒いからはやく帰ってきて?」
と、手を広げる。
私はそれがなんとも言えないほど幸せで、また拓未の前に座ると、拓未が後ろから手を回してくる。
ゴツゴツした手に自分の手を重ねて、優しく握る。