ご褒美は唇にちょうだい
「あなたに降りかかる火の粉を防ぐのも俺の役目ですから」


「火の粉に当たらないわよ。アイドルの遅刻くらい」


「あなたの表現の妨げになるなら、すべて障壁と見なし、排除しますよ」


当たり前のように口にする、その行き過ぎた騎士精神。

真木久臣という男は女優・鳥飼操の絶対的な支持者だ。
私が役に集中できる環境を作るのが、自分の天職だとでもいうように、この5年滅私奉公を続けてくれている。

私も頭が柔らかいほうではないので、演技を優先すれば、周囲が見えなくなることも多い。
そんな時も、彼は矢面に立ち、私と周囲に摩擦が生じないようにしてくれる。


「ねえ、朝ドラ、来週からクランクインでしょう?」


私はやってきたジンジャーエールを手に、久さんの顔を覗く。


「ええ、少し忙しくなります。やらなければならないことは今週中に……と言いたいところですが、『中天に輝く』も佳境です。自由時間は金曜午後に少々」

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