ご褒美は唇にちょうだい
「イッコだけ、見破られてないことがある。私、レモンリキュールのソルベが食べたいんだけど」


「それも頼んであります。あなたのことなら、概ねわかりますよ」


久さんは言うけれど、私は不満な表情をして見せる。

久さんは肝心なことをわかっていない。
それともわかっていながら、スルーしているのかもしれない。

あり得るな。
この男の本性は見た目とまったく違うんだから。

意地悪で屈折した情熱家。
外見だけクールぶっているからタチが悪い。

もう無駄に絡むのはやめて、料理がそろうまで仕事の話を試みる。


「あのさ、さっきみたいなことやめてね」


「何がです?」


「共演者の態度云々って、マネージャーが口出さないでしょ。どんだけ過保護なのよ、うちの事務所は」


私が顔をしかめても、久さんは平然としている。
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