ご褒美は唇にちょうだい
毎日、撮影に送り出し、常に駆けつけられるよう、ほとんどの仕事を現場でこなした。
帰宅すれば、操に食事を食べさせ、翌日の準備を手伝う。

夜中にトイレで吐く操の背をさすり、痛みで眠れない操の手を握り続ける。


「久さん、ごめんね」


操は何度も謝った。
その都度俺は首を振り、「謝らないで」と彼女の髪を撫でた。

マネージャー業も長くなったけれど、まさか自分が24時間甲斐甲斐しく尽くせる人間だとは思わなかった。
相手が操だからというのはある。

操は俺の大事な女優。
そして、たったひとりの女だ。

操を死なせたくない。
そんなのは彼女の両親以上に思っている。

操は知らないだろうけれど、たとえば操が女優を辞めたとして、俺は彼女を生涯養っていくことだっていとわない。
もっと言えば、彼女がどれほど嘆いても、彼女から女優の仕事をとりあげ、手術を受けさせてしまいたい。
女優としての彼女を殺したっていい。俺のそばで生きていてほしい。

操はきっと真逆のことを思っているだろう。


『鳥飼操と真木久臣を繋ぐのは“女優”という絆だけ』


もう、そんなことではおさまらない俺の気持ちは口にしていない。

操を愛している。

だからこそ、だ。
俺は操の願いを叶える。俺の願いは後回しでいい。
操が一番望むことを支援し、その隣を歩き続ける。

それが俺の隠すべき愛情のすべてだ。
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