ご褒美は唇にちょうだい
「そんなに簡単なものですか?」


「簡単だなんて、口が裂けたって言わない。私は努力してる。私は覚悟を持っている。それだけよ」


彼女の言葉は青臭い若者の語りに聞こえた。
しかし、実現させている以上、その言葉には力がある。

ガキだなと思う一方で、彼女の持ちうるエネルギーの総量に圧倒されそうになる。
なんなんだ、この女。
先ほど、演技した別人のごとく激しい操を思い浮かべると、背筋にぞわりと謎の感覚が走る。


「操さんは、どんな女優になりたいんですか?」


気付いたら聞いていた。陳腐な質問をしてしまって、自分で焦った。
操は数瞬黙った。それから答える。


「欲しがられる女優。たとえば死んだ後も」


静かすぎる声音で熱い欲を語る。
またしても背筋が寒くなった。高校生の夢か、それが。

女優とはみんなこんな理解不能なものなのだろうか。だとしたら、俺が話しているのは何者なんだ。

同時に、目の前が開けていくような胸の高鳴りを覚えた。

とんでもない器の女に出会ってしまった。
なんて、面白いんだろう。情熱的で、熱くて、美しい。
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