ご褒美は唇にちょうだい
俺は背を向け、車のキーを取り出す。
その返答は、何もしないという意味だ。

横目で見た操は落胆した様子だった。女優のくせに、感情を隠すのが下手で困る。
何を期待していたか一目瞭然じゃないか。


「帰って……あるもので済ますからいいや」


「そうですか。それでは、お送りします」


操はおとなしくついてきた。

しょげた様子を見せないようにしているつもりがバレバレ。
そんな操を愛しくも思うが、それは飽くまで年少の警護対象者に対する労りのようなものだ。

操、勘違いするな。
おまえのそれは恋じゃない。

確かに俺はおまえの初めてのキスの相手をした。だけど、それだけだ。
恋愛じゃないんだよ。わきまえろ。


「操さん」


振り向いて髪に指先を触れると、操が大仰に肩を揺らした。
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