『狂っていたのは、僕だった』〜くる僕〜
3

計画










『疲れたぁ、ただいまー』









「あら!今日は早いのね〜おかえり、晴」






母さんはそう言った




浅野 真知子《あさの まちこ》

40半ばの、キャリアウーマン



普段は、ほとんど家にいない




海外出張が多く


数ヶ月と家をあけることも珍しくない









『そっちこそ!!今日、帰国だったんだ?』





「少し早く仕事が終わったからね〜」




母さんは相変わらず 元気な声で答えた





「そういえば、彼氏ができたのよ、わたし」







僕らには

小さい頃から父親はいない






詳しく聞いたことはないが離婚した




母さんは一流企業に勤めていて



ちゃんと学費も生活費も出せる余裕があった



そのため、今までも苦労させられたことはなかった







まぁ僕にとっては


兄さんと2人になれることは有難かった







『へぇ〜彼氏か、どんな人なの?』





「んー、まぁそうねぇ…」






「悠ちゃんに似てる人かしら!」





僕は予想外の言葉にそのまま耳を傾けた






『なんだよーそれ、まぁ良かったな!』






「ありがとうね、いつか会わせたいわ」




「そうそう、1週間後からロンドンだから、また家よろしくね」








「ねっ、悠ちゃん?」





そう言って少し遠くにいる僕の方を見た




「うん、分かったよ、母さんも気をつけてね」






そう僕は返した






あれ、



兄さんが少し寂しそうな顔に見えたのは





僕の気のせいかな








久しぶりに3人で夕食を食べて


母さんから延々と海外での話を聞いた





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