『狂っていたのは、僕だった』〜くる僕〜


《コンコンッ》



『はーい、悠か?』



「うん、紅茶入れたから」





ベッドに座る兄さん



その下に座る美咲さん





紅茶を出すと

僕は部屋を後にしようとした






「あっ、悠くん!」




美咲さんの声




「なんですか?」




「ありがとう!いただくねっ」



また笑みを見せた




いいえ、とだけ残し


僕は部屋を出た







美咲さんのあんな笑顔に

兄さんは惚れたのかな






今までの彼女の中でも大切にしてる気がする






僕にはその魅力がわからない



笑顔が眩しいってだけで





まぁだいたい兄さんの彼女が
可愛く見えるわけないんだが







「えー、近いから!ねぇ〜…」






隣の部屋から小さく聞こえたその声




ドアを開け少し近づいてみる






《ちゅっ…》




まただ






嫌だ


嫌だ嫌だ





兄さんが奪われていく気がした





いつも彼女とこういうことになってるって




考えないできた






けど




美咲さんは


誰よりも




ずっと


ずっと




嫌だった



嫉妬した




奪われるくらいなら








そうどこかで僕は思った





憎しみがひとつ




僕の心に張り付いた





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