この恋、賞味期限切れ


今日、無事に南は退院した。


手術が成功し、容態が安定してきたのを見て、病院側が退院してもいいだろうと判断してくれたのだ。

この退院は一時的なもので、また何度か入院や診察を繰り返したりするらしいのだけれど、まずはひと安心。


またこうやって南の無垢な笑顔を見れて、今、最っ高に幸せ!



……そして。



「って、そうゆっくりしてもいられねぇんだったな!」

「あっ、そうだった!」

「行こうぜ」

「うん!」



実は、今日、3学期の始業式がある。

というか、現在始業式真っ最中……だと思う。


つまり、完全に遅刻。大遅刻。


それを承知で、約束を交わした。


私にとっては、好きな人と一緒に登校することのほうがよっぽど重要!

しかも南から誘ってくれたんだよ!?
選択肢はどれも「YES」だった。

好きな人との時間に比べたら、遅刻なんて大したことじゃない!


でも、南はそう思っていないみたい。



「わりぃ。やっぱ遅刻になっちまったな……」

「別にいいよ。気にしていないし」



本当に全然。これっぽっちも。

むしろ南と一緒でラッキーというか。



「でも始業式だぜ? 叱られたり罰せられたりするかもしれねぇじゃん」

「怖い?」

「俺はいいけど……憧子まで言われんのは、やだ。憧子は俺のわがままに付き合ってくれただけなのに」

「一緒にいようとするのは、わがままじゃないよ」



それをわがままと呼ぶなら、もっと言ってほしいくらい。

それにね?



「私もね、怒られるのは怖くもなんともないし、南とふたりなら罰を受けてもいいかなって、わりと本気で思ってる」


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