百鬼百光
大婆様は煎じ終わった薬を笹袋に注ぎ
紐で注ぎ口を縛った
「リツよ、ちとこちらへ来なさい」
なんだろう?
首をかしげながら大婆様の元へ近づくと
大婆はにっこりと微笑んだ
「手を、出しなさい」
手・・・・?
不思議に思いながらも私は両手を差し出した
すると
先程の笹袋をそっと私の手のひらに置いた
えっ・・・・!?
「これはリツのためにわしが意を込めた・・・・これを持ってゆけば必ず無事に大神様の元へ辿り着けるはずだよ」
大神様は私の手をきゅっと握り、包み込んだ
ラバの実は希少価値が高いことから
私達の祖の代から“幸運の実”と伝えられてきた
昔は旅に出る者の無事を祈って
笹袋に入れ持たせたそうだ
近時では
大神様がラバの実をお気に召したらしく
ほとんどが神殿へと献上され、私達天者は手の届かない代物になっていた