抜き差しならない社長の事情 【完】
「……ぁ」
突然飛び出してきた紫月に驚いてパソコンから顔をあげた曄は、
茫然と紫月を視線で追ったが、
紫月がエレベーターの中に消えると、今度は閉じられたままの社長室の扉をパチパチと瞬きをしながら見つめた。
「…… ぇ?」
そして、社長室の中では――
額に手をあてた切野社長が、ガックリとうな垂れていた。
「……」
しばらくそのまま俯いていた社長は、
ハァ―― と深いため息をついて、ゆっくりと顔をあげると、
目の前にある紙袋に目を止めた。
白くて小さなそれは
紫月が置いたバレンタインの贈り物である……。
社長はゆっくりと手を伸ばし、
紙袋を手に取って
中を覗くと、
小さな箱と一緒に、カードが入っていた。
カードを取り出して開くと……