抜き差しならない社長の事情 【完】


「不器用ってどう不器用なんですか?」


「ん?

 ――どうって……」



夕べ梨紗と一緒に、食べ終わった食事の後片付けをしていた時、

手を滑らせた梨紗が盛大な音を立ててグラスを割ったことを思い浮かべた相原は、


そもそもの出会いを思い出した。






――とあるパーティでのことだ。


振り向きざまにぶつかってきた梨紗にワインをかけられた。

相原以上に驚いた梨紗は
『キャア!』
悲鳴と共にグラスを手放し、

相原は慌てて、そのグラスを床ギリギリで受け止めた。 




「まぁ……、とにかく色々とだな」



「課長、面倒見がいいからちょっとくらい不器用な女の人のほうが合うんでしょ」



 クスッ
< 164 / 169 >

この作品をシェア

pagetop