抜き差しならない社長の事情 【完】
蒼太は理系の真面目な学生だった。
紫月や亜沙美は文系だったから接点はあまりなかったが、
一般教養の授業で時々一緒になった。
蒼太は女の子に積極的に話しかけるようなタイプではなく、
目立たない男の子だったが、
ある日、
何かのレポートをパソコンで仕上げなければいけなくて
困っている紫月にそっと声をかけてきた。
『あ…… あの、それは……ここを』
『あ…ありがとう』
大人しくて真面目で誠実な二人が恋に落ちたのは、
今思い返しても、自然なことだった。