抜き差しならない社長の事情 【完】
大学を卒業して、蒼太がプロポーズしてくれたと
泣いて喜んでいた紫月……。
そして、普通に結婚したいという純情な夢を打ち砕いた紫月の母のセリフ
『紫月はね、蒼太くんとは結婚できないの』
その時に紫月が聞かされたのは
百年続く呉服屋『夢や』の借金のことだったという。
家族思いの純粋な紫月を、両親が言いくるめるのは、
そう難しいことではなかっただろう……。
『亜沙美、好きな男の子にフラれる時、
どんな風にされたら忘れられる?』
紫月にそう聞かれて、
その時何も知らなかった亜沙美は
『できるだけ冷たくフラれる方がいいな。
中途半端にフラれたら忘れられないから』
そう答えた。
それから数日後の事だ。
蒼太と別れたと、泣きはらした目をして紫月が打ち明けてきた……。