抜き差しならない社長の事情 【完】


「そうですか……」


もしかして私と同席したくないから?
と軽く傷ついた紫月は、まさか、と思い直した。


いくらなんでも学生じゃあるまいし、

蒼太だってもう30歳で、
人の前に立つ社長なのである。

表向きくらいは大人の対応が出来ないはずはないと考えるうち、

ふと思い出した。



 そういえば蒼太は
  大勢の飲み会とか好きではなかった……


すると、

「社長、ここのモツ煮好きなのに残念だなぁ」

という声が聞こえてきた。



――ん?



隣に座っている神田専務に

「切野社長も飲み会に参加するんですか?」

と聞いてみると


「参加もなにも、あいつは飲んで騒ぐのが好きだから」

と言ってクスクス笑う。



「――そうなんですか」
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