抜き差しならない社長の事情 【完】
紫月のお財布事情に詳しい相原は、
「俺の恋人にドレスを借りてやろうか?
ちょっと胸が緩いかもしれないけどな」
などと、本気なのか冗談なのかわからないことを言う。
「なんですかそれ!何気に失礼じゃないですか課長ったらもぉー。
でも大丈夫です。私、何着か着物だけは持っているんですよ」
「あ、そっかそっか。お前は呉服屋の娘だもんな」
実を言うと、紫月はドレスの類は一着も持っていない。
ドレスを着るような席には着物を着ていたからだ。
着物の着付けは自分で出来る。
それは紫月が呉服屋の娘であることの名残のようなものだった。
「元呉服屋ですけどね」
「着物かー、うーん。それは楽しみだな」
「惚れないでくださいよ」
クスクス