抜き差しならない社長の事情 【完】
とにかく今日は疲れた……
お風呂に入って、早く寝ようと自分の部屋に行くと、ふと
窓際に置いてあるガラスの瓶が目についた。
ストームグラス――
透明の薬品が入っている瓶の中には、白い結晶が出来る。
天気管と呼ばれて19世紀航海士が使っていたというものらしい。
ガラス瓶の中を覗くと、細かい結晶が沢山見えた。
明日は雪かもしれないな……
と紫月は思った。
今はまだ2月、冬真っ盛り。
温かい春はすぐそこまで来ているのに、そんなことさえ否定するように寒い日が続いていた。
紫月は電気を消して、ストームグラスの前にしゃがみこんだ。
やがて目が暗闇に慣れてくると、ガラスの中に浮かぶ雪のような美しい結晶が、浮き上がってくる。
蒼太が好きだからと自分もこのガラス瓶に興味を持って、いつしか蒼太は関係なしに自分が好きな物になっていた……。
7年は長い――。
いつの間にか、ストームグラスを見ても蒼太を思い出すことはなかっていたのだから――