抜き差しならない社長の事情 【完】


とにかく今日は疲れた……


お風呂に入って、早く寝ようと自分の部屋に行くと、ふと
窓際に置いてあるガラスの瓶が目についた。


ストームグラス――


透明の薬品が入っている瓶の中には、白い結晶が出来る。
天気管と呼ばれて19世紀航海士が使っていたというものらしい。

ガラス瓶の中を覗くと、細かい結晶が沢山見えた。

明日は雪かもしれないな……
と紫月は思った。


今はまだ2月、冬真っ盛り。

温かい春はすぐそこまで来ているのに、そんなことさえ否定するように寒い日が続いていた。


紫月は電気を消して、ストームグラスの前にしゃがみこんだ。

やがて目が暗闇に慣れてくると、ガラスの中に浮かぶ雪のような美しい結晶が、浮き上がってくる。


蒼太が好きだからと自分もこのガラス瓶に興味を持って、いつしか蒼太は関係なしに自分が好きな物になっていた……。


7年は長い――。


いつの間にか、ストームグラスを見ても蒼太を思い出すことはなかっていたのだから――
< 67 / 169 >

この作品をシェア

pagetop