抜き差しならない社長の事情 【完】
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「ありがとうございました」
と紫月が背中に声をかけると、
振り返った神田専務が、ニッコリと微笑んで手を振る。
紫月の隣には、ちょうど帰ってきた亜沙美も立っていた。
「あの人が専務なんだ 優しそうで素敵な人じゃない?」
「うん、実際優しくていい人。
なんでも蒼太が最初に勤めていた会社を辞めて一人でゲームアプリとかを作っていた頃、神田専務は大手IT企業にいたらしくて、そこに来ないかって蒼太を誘ったらしい。
その時、意気投合したとかなんとかで、逆に神田専務がその大手ITを辞めて、蒼太と『Kg』を作ったらしい」
「ふーん」
「『Kg』の人はみんないい人だよ。
蒼太の秘書の恋人だって、見た目が可愛いだけじゃなくて、穏やかで、のほほんとした優しい子だしね」
そう言いながら、紫月は胸がチクッと疼いた。