抜き差しならない社長の事情 【完】

手を伸ばしてパラパラと開いて見たものは……


「ああ、マニュアルですね。
 紫月はパソコンが苦手でね、ハッピーに来た頃もまぁー簡単な文書を作成するのも一苦労で、パソコンというよりも機械全般が苦手なんだろうな。
 コピー機で紙が詰まることを誰よりも怖がってましたよ」


話ながら相原は思い出したようにクックックと笑った。


「それでもね、人に聞いたら迷惑をかけるからって言って、実用書を買ったりマニュアル読んだり、そうやって付箋だらけにして一生懸命なんですよ」


「それじゃ仕事が進まないでしょう」

と社長が苦笑すると、


「家で読んでくるんですよ」

と相原が言う。



「ほら、この付箋見てください。
 猫だの犬だの乙女チックな可愛い物ばかりでしょ。
 少しでも見ることが楽しくなるように、色々買ってきて、あ、自分のお金でですよ、経費にはしてませんから。

 まぁとにかく人の何倍も苦労して一生懸命、頑張っているんですよ」



「そうですか……」
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