抜き差しならない社長の事情 【完】
仕事中でも、こんな時なら許されるだろう……
小さなスピーカーから流れてくる曲は、切なくて胸が締め付けられるようなラブソングではなく、
前へ進め、前へ進めと励まして、
否が応にも元気が出てくる明るい曲だ。
とにかく『Kg』を辞めることは決めた。
あとはいつ退職届を出すかという、時期の問題だけである。
夕べ、心に疼く様々なものを涙に混ぜ込んで、
体中の水分が無くなるほど泣きつくしたおかげで、紫月の心にはもう何の迷いもなかった。
スッキリとした気持ちで
~♪
時々歌ったりしながら、30分ほどした頃……
「あれ? どうした紫月」
相原課長は会社に帰ってきた。