抜き差しならない社長の事情 【完】
このところ考え事が多かった自覚があるだけに猶更、自分のミスが情けなかった。
飲み会には行きたくなかったし、
こんな時は、むしろ一人がいいと思いながら、
紫月は誰もいない静かなフロアーで必要のない電気を消した。
シールのシートに日付をプリントし、カッターで切ってペタリと貼る。
経験からいって一人で5時間くらいかかる量だが、課長が戻ってきてくれればそれからはその半分の時間で済む。
でも、相原課長が戻ってくるかどうかはわからなかった。
なにしろ課長の出張先は名古屋だ。
ミスのことは伝えていないので、直接家に帰るかもしれない。
もし帰ると連絡があった時は、ミスの事は言わずにお疲れさまでしたと言うつもりでいた。
単純作業は、かえって気持ちを落ち着けてくれるから丁度いい……
そんなことを思いながら、通勤のバスの中でいつも聞いているポータブルプレイヤーに100円SHOPで買った小さなスピーカーをセットした。