海月物語。
 海斗は、少し早めに仕事を切り上げた。
「ただいま。」
海斗はリビングに行くが、来海の姿がない。
«トントン»
「いるのか~?」
海斗は、客間のドア越しに声をかける。返事がない。海斗は、ドアを開けた。暗くなっているのに電気も付けず、ベッドの上に座っていた。海斗は客間の電気をつける。
「来海?」
来海は、顔をあげる。海斗の顔を見ると、ニコッと笑った。
「おかえり。」
海斗は来海の横に座った。
「どした?昨日ごめんな。連絡すればよかったのに‥」
来海は、海斗の右腕両手で抱き締めた。
「良かった‥‥。」
「ん?」
来海の突然の行動に、海斗は身動きできなかった。
「生きてて、良かった。」
海斗は、来海が話してくれた、元彼の話を思い出した。
「ばーか。死なねーよ。」
そう言うと、海斗は、来海の小さい頭に顎をのせる。
「疲れた~っ。」
面接が決まったことを来海は、言うタイミングを失った。


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