冷酷上司の甘いささやき
でも、安心したのもつかの間。



「そういえば今日、阿部さんお休みらしいですよ」

「えっ」

日野さんにそう言われ、胸が一気にざわつく。


今日、職場に来るまでに不安だったのは課長のことだけじゃない。むしろ、阿部さんのことだ。今日もちゃんと来てくれるかな、って昨日からずっと心配だった。



「お、お休みって、やっぱ私のせい……だよね、確実に」

私はおそるおそる、日野さんにそう聞くけど。


「んー、とりあえず電話では『体調不良』って言ってたみたいですけど。まあ、確かに昨日のことが原因ですよね、きっと。
でも、べつに戸田さんのせいじゃないですよ。もとはと言えばあの子に原因があるわけだし。
それに、あの子がいてもちゃんと真面目に仕事してくれないんですもん。
たぶん、あの子はどの店で働いていても、遅かれ早かれ仕事に来なくなったんじゃないかと思います」

日野さんは水やりを再開しながら、さらっとそう答える。


……それでも、やっぱり心配。
阿部さんだって、もしかしたら実は新社会人生活に対して、期待で胸を膨らませていたのかもしれない。
このままじゃ、私のせいで阿部さんの期待や希望を台無しにしてしまう。



なんとかしたいなって思う。
だけど、部長に相談しても、『あとはこっちでなんとかするから』としか言われなくて、どうすることもできない。
連絡先も、そのうち聞こうと思っていたからまだ知らない。日野さんやほかの社員さんたちも、誰も阿部さんの連絡先をまだ知らなかった。
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