冷酷上司の甘いささやき
もしかしたら、土曜日に課長と阿部さんがふたりで話してた時、課長は阿部さんに対してなにか感じたのかな？ それで、やさしくしているの？



……疑うのは良くない。でも、土曜日はいっしょに夕飯を食べなかったのも、日曜日に一切LINEとかくれなかったのも、もしかして私といっしょにいるのが嫌になっちゃったから……？ とか考えてしまって……。



仕事中、ふと課長を見れば、やっぱり阿部さんに対してやさしく笑ってる。

これには、周りの社員さんたちも驚いていた。あのクールで無表情とも言える課長が、女の子に対してやさしく笑っているなんて、もしかして課長と阿部さん、付き合ったりするんじゃ……なんて憶測が飛び交うのもあっという間だった。



私と課長が付き合っていることは誰も知らないから、そんな憶測からのウワサ話は私の元まで遠慮なく耳まで届く。

そして、私たちが付き合っていることを今はまだ隠さなければならないため、そのウワサ話を無理に否定するのもなんだか変な空気になりそうで、できない。



ウワサ話が耳に入ると辛くなる、だけどそのウワサ話を否定することもしづらい。



本当は、仕事が終わったあと、課長と少しでも話したいなって思った。

でも、そんなことは言えなかった。仕事終わりに落ち合いたいなんて、そんな恋人らしいことを提案したら嫌がられるかと思った。

せめて家に帰ってからのLINEでもよかった。課長となにか会話したかった。
だけど同じ理由で、私からLINEはできなかった。


……気楽だからっていう理由で、“距離のある恋人”になったはずなのに、なんだか、この距離がつらいよ……。
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