Live as if you will die tomorrow
零時をやや過ぎた頃。
「外すごい雨ー」
崇達とは別に、カウンターに座った客が、開口一番にそう言って、衣服から雨を払う仕草をした。
「随分濡れたみたいだね。良かったら、タオルどうぞ。」
「あ、ありがとう!」
営業スマイルを浮かべながら、最近突然の雨が多いな、とふと思う。
それも、かなり強い雨だ。
ーそういえば、空生が制服置いてった日も、雨が降ったな。
思い出そうとした訳でもないのに、何故かそこだけ記憶が呼び覚まされ、我ながら感心する。
「猫は、雨嫌がるよね」
「ーえ?」
ぼそっと落とした独り言を、何も知らない客に拾われて、俺は笑顔で首を振る。
「いや、餌付けしてる猫はどうしてるかなって心配になってね」
「えー、餌あげてるんだぁ。優しいんだね。でも、増えたら困るから、しない方がいいんじゃない?近隣から苦情とか、きたら大変でしょ?」
黒髪ショートの女は、自分の身にも覚えがあるのか、真面目顏で諭し始めた。
それを俺はまたも笑ってやり過ごす。
「大丈夫。一匹だけだし、もう少し慣れたら飼うつもりなんだ。」
言いながら、メニューを差し出した。
「さ、何飲む?」