Live as if you will die tomorrow
ー今日は一段と表情が薄いな。



「ずぶ濡れじゃん。なんかあった?」


掴んでいた腕を放しながら、薄暗い道で、顔つきを窺う。


「……本当だ、濡れてる」


俺の指摘に、空生は今気づいたとでも言うような反応を示した。


ー濡れてるどころじゃ、ないんだけど。


やけにぼうっとしているというか、明らかにおかしい。変だ。


「ま、とにかく、中入りなよ。俺ももう戻る。」


平静を装い、踵を返すが。


「空生?」


当然付いてくるだろうと思ったのに、空生の来る気配がしない。

数歩戻った所で、顔だけ振り返ってみれば、空生はさっきと同じ場所に突っ立っている。



「…その名前」


「ーは?」


相変わらず能面みたいな乏しい顔で、ぼそっと呟くので、最初聞き取れなかった俺は、眉を顰めた。



「…その名前で呼ぶの、やめてくれる?」



嫌いなんだよね、と続けてから、空生は俺に背を向ける。



「ー来ないの?」


再び誘ってみるが、空生はそれには答えず、さっさと路地裏から姿を消した。



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