Live as if you will die tomorrow
「なんだよ、生意気な奴」
煙草を利き手に持ち、口から外して、ハハっと、一人笑う。
年下に無視されるなんて、と思いながらも。
「名前は人を縛るなー」
名前が嫌いだと言った空生に、自分を重ねていた。
「ーやめやめ。」
過去に引っ張られそうになった思考を首を振って払いのけ、持っていた煙草をまた咥え、ドアノブを引っ張った。
「ーー?」
直ぐ様感じた違和感。
フワリ、開いた中に身体を入れて、鉄扉がガチャンと音を立てて閉まった瞬間。
咥えた煙草を放し、照明の下でそれを見る。
「ー血…」
巻紙に付いた黒い染みに、自分の手を広げた。
空生を掴んだ掌が、赤黒く染まっていた。
ーあいつ…
何してんだよ、と柄にもなく跡を追いかけようかという気になった。
が、直ぐにそんな自分を制した。
心配や同情なんてものは、こっちの世界にありはしない。
「ーお前の居場所は、ここしかないんだ。」
どうせ、確実にここにくると、確信していた。
雨は、断続的に降り続く。
雨音が消してくれなかったのは、空生の名前。
雨水が消してくれたのは、血の、臭い。