mariage~酒と肴、それから恋~《2》
「何?急に。そんなの分かんないよ」


「ここぞという落としどころで、一気に攻めること」


そう言って、一歩踏み出してきた。


怯んで、一歩下がると、構わずまた距離をつめてくる。

百田の一歩は、あたしより大きくて逃げ切れない。


あっという間に、背中に回された両腕にきつく抱きすくめられた。


「ちょっ…!」


心拍数が急上昇する。


まるで恋してるみたい。


腕の中で、みるみる体も熱くなって、抵抗しようも腕に力が入らない。


「年末にさ、同期が一人結婚しただろ?結婚式の写真、小松がメールで送ってきたんだよね。

そこに佐藤も写ってて。

佐藤はまだ結婚してないって聞いたら、本社戻るのが楽しみになった。

で、決めた」


「決めたって、何を?」


百田は腕をほどいて体を離した。


今度はその長い指先があたしの唇をなぞり、首の後ろにまわされる。


ニッと不敵に笑って、身を乗り出したかと思うと――…


睫毛を伏せて傾けた顔が目の前に覆い被さって、抵抗する間もなく、唇が触れ合った。
< 29 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop