不良探偵
あまりに凄絶な、リンチとも言える耕介の攻めに、周囲の半グレ達も恐れをなし、止めに入る事さえできない。

迂闊に止めに入ったりしたら、今度は自分が同じ目に遭わされるかもしれない。

誰だって我が身可愛い。

そう考えると、青年を見殺しにするしかなかった。

ぐったりと項垂れ、半泣きの赤く染まった顔で、殴られ続ける青年。

その目はすっかり『負け犬の目』だ。

と。

「探偵さん」

耕介の殴る手を、雛罌粟が押さえた。

「もういいよ…その人死んじゃう…」

「いいじゃねぇか、ぶっ殺せば」

耕介は冷徹な目で青年を見下ろした。

「こんな奴、社会の屑だ。殺した方が治安の安定に繋がるぜ」

「そうかもしれないけど…」

雛罌粟は耕介の腕にギュッと抱き付いた。

「探偵さんが人殺しなんてするのは嫌…」

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