不良探偵
この至近距離で、不意打ちで投げつけた灰皿を蹴りで弾く。

大口叩くだけあって、腕に自信はあるようだ。

「成程な…ウチの下っ端じゃ勝てねぇ訳だ」

「そりゃそうだろ。もうちょっと強ぇ奴回さにゃ、俺に失礼ってもんだ」

ハンドポケットのまま、耕介は鏑木を見る。

「ウチの事務所の近所で嫌がらせして回った挙句、放火までしようとしてたの、お前の舎弟だろ?」

「知らねぇな」

「本人は『鏑木に命令された』っつってるぜ?」

「硬派で売ってる東京連合も、最近は根性無しが増えてな…上のモンの名前ひけらかさねぇと喧嘩も出来ねぇヘタレが増えてんだ」

「責任は舎弟になすりつけるってか」

「下が勝手にやった事まで面倒見切れるかよ。俺は任侠ヤクザじゃねぇんでな」

そう言って、鏑木は財布を出して1万円札を十数枚、テーブルの上に置いた。

「要は金だろ?これやるからさっさと帰れ、ハイエナ野郎」

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