ナイショの恋人は副社長!?


「Can I help you ?」
 
流暢な英語で対応する今本を横目に、優子は日報を書き始める。
長身の外国人男性を難なく案内し終えた今本に、苦笑を浮かべて言った。

「今本さん、本当に発音いいですね。私も、もう少し勉強しなくちゃ」
「優子ちゃんって、熱心だよね。そのノートも。あれ? でも、そういえば、ドイツに留学してたんじゃなかったっけ?」
「でも、ドイツ語だけで、英語はイマイチ……」
 
優子はメモ帳を閉じ、トンとデスクに立てて、隅に置いた。

「ドイツ語話せるなら、すごいじゃない!」
「日常会話程度ですし……第一、あまり使う機会がなくて。でも、唯一の自慢ですかね。他に取り柄ないし」
「優子ちゃんって、本当に謙虚っていうか……もしかして、自信持てないタイプ?」
 
突然、図星を突かれた優子は、一瞬目を見開くが、すぐにいつもの笑顔に戻る。
そして、書きかけの日報をパソコンに再度打ち込み始めながら、乾いた笑いと共に答えた。

「いや~。そもそも、自信持てるようなもの、他にないですから」
「えー。勿体ないなぁ! 顔もスタイルもいいのに。あ、彼氏は? そういえば、そういう話、したことないね!」
 
今本が、チラッと腕時計を確認すると、終業時間。
それをいいことに、勤務時間には抑えている私語を、小声でここぞとばかりに続ける。

「いないの? なんか優子ちゃんなら、誠実そうな彼氏とかいそうだけど!」
 
恋愛話となると、大抵の女性は盛り上がる。
今本も、それに違わず当てはまるようで、目を輝かせて優子を問い詰めた。

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