ナイショの恋人は副社長!?
「いくつ? やっぱり年上? どこで知り合ったの?」
「いやいやいや……。待ってください。いないですから、彼氏なんて」
「えーっ。ウソだぁ」
「……ウソ吐いてどうするんですか」
 
半ば呆れ声で優子が答えるも、今本は、まだどこか納得のいかない様子。
優子の顔をジッと見て、声を潜めた。

「もしかして、理想が高いとか? 例えば、ウチの社長――とか」
「ちっ、違いますよ!」
「あ。ちょっと慌てた。怪しいな~」
 
冷やかし半分の今本に、大抵のことには動じないはずの優子の表情が崩れる。

その理由は、〝社長〟というワードのせいだ。
もちろん、優子の片思いの相手は社長ではなく、副社長。

しかし、『社長』と言われただけで敦志を連想しては、気が動転してしまう。

「いえ、本当に! 私、社長の方はあまり……」
「社長……〝の方〟?」
 
うっかり余計な口を滑らせてしまったと、優子は目を見開き口を噤むが、逃げ切ることは出来なかった。

「それって、つまり……副社長?」
 
後悔先に立たずではあるが、出来るならば十秒前に戻りたいと思ってしまう。
けれども、そんなことが叶うはずもないと、優子は諦め、開口した。

「いえ……なんていうか、どちらかといえば、ということですよ」
「ふーん。なるほど。まぁでも、私の予想も、当たりみたいなものだよね?」
「え?」
「だって、副社長は〝誠実そう〟だから」
 
見透かすような目を向けられ、ドキリとする。
懸命に、これ以上本音を零さないように、心を落ち着かせてから今本に向き合った。

「そう言われれば、そうかもしれませんね」
 
平静を装って答える優子を、今本は本心を探るような目で聞く。
結局、互いにそれ以上踏み込むことなく、退社の準備に戻った。
 
内心ほっと胸を撫で下ろした優子は、パソコンを閉じると、隅に置いていたメモ帳を手にして受付を後にした。

< 18 / 140 >

この作品をシェア

pagetop