ナイショの恋人は副社長!?
 
翌日。優子は、酷い頭痛と戦っていた。

「優子ちゃん、昨日はどうだったの? どんなお店に行ったの? 副社長となにか話せたの?」
 
優子の顔を見るなり、矢継ぎ早に質問責めをする今本に、にっこりとした笑顔で返す。
その表情からは、二日酔いを微塵も感じさせない。

「昨日は、懐石料理のお店でした。副社長とは……」
 
話しを始めた優子が、今本の驚く顔に首を傾げる。
優子が今本の視線を辿るようにゆっくり振り向くと、そこには敦志の姿があった。

「おはようございます。昨日は、ありがとうございました」
 
目を見開いた優子は、突然のことに動揺して言葉が出て来ない。
 
それはそうだ。一階フロアに現れることがあっても、受付に話しかけるどころか、近づくことも今まではなかったのだから。

「えぇと、その……お変わりはありませんか?」
「え? あ、はい……」
 
敦志の様子がいつもと若干違う気がした優子は、不思議そうな声を出す。
 
優子の知る限り、敦志という人間は、純一とはまた違うが、一歩引いた場所で堂々と立ち、スマートに補佐をするようなイメージだ。
それは目に見えるものだけではなく、話し方も同じ。もっと、ストレートにかつ穏やかな雰囲気でものを言うはず。
 
それが、どうだろうか。敦志が最後に問いかけた言葉は、どこか迷いがあるような、窺うような話し方だった。
 
さらに、もうひとつ。
直接話したことのない今本には気が付かないことだが、何度か一対一で話をしたことのある優子だから感じる違和感。
 
敦志はいつも、真っ直ぐに目を向けてきていたはずなのに、今は所々でしか目が合わない。

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