My Fair Farewell
裕が離れていく。
その背に、言い忘れたことを思い出して、わたしは「裕」と、声をかけた。
あんなに背中、広かったっけ。
なんて思った。
あの背中に、すがったことはなかった。
あのひとに頼ったことはなかった。
あのひとも、わたしに背を預けたことはなかった。
甘えられたことなど、なかった。
頼ればよかったんだろうか。
もっと、甘えればよかったんだろうか。
甘えていいよ、頼っていいよと、言ってあげればよかったんだろうか。
たったの三県の距離が遠くて。
その距離を頼らない言い訳にしていたけれど、きっと、三県の距離があったって背中を預けることはできたんだ。
できないと思いこんで、しなかっただけで。