過保護な彼に愛されすぎてます。


高校に入って郁巳くんの身長が一七五センチを超えると、身体付きもさらにがっしりとしてきた。

細マッチョって言葉がぴったりな体格は、男子生徒からもよく羨ましがられていたし、私から見ても、郁巳くんの筋肉のつき方はすごく綺麗だなぁと思うほどだった。

その頃からモデルの仕事も始めた郁巳くんは、自信がついたのか、今まで以上に明るい笑顔をするようになった。
女の子に囲まれてもニコニコしていたから、人間不信も少し治まったのかなって胸を撫で下ろした。

……でも。それは、楽観視しすぎた思い違いだってすぐに知る。

『ねぇ。坂井奈央って、あんたでしょ?』

呼び止められたのは、学校帰り、校門を出たところでだった。

顔を上げると知らない女子生徒が数人いて……その時点で、なんとなくなんの話かを悟った。
それまでも何度かあったことだったから。

着崩した制服に、メイクされた顔。
こういう派手な感じの子たちが郁巳くんの周りを囲んでいるところをよく見かける。

茶色い髪の毛先を、指先でくるくるとしながら、知らない女子が睨むようにして私を見ていた。
どうやら、待ち伏せされていたらしい。

『郁巳のお気に入りなんでしょ? 本当にコレで合ってる? ちょっと普通すぎない?』
『ねー。私もそう思いたいけど、どうやら合ってるらしいんだよね。郁巳と一緒にいるところ見たし、そのとき郁巳すごい笑顔だったし。
なんか、それがすっごい気に入らないんだけどー』

私を見定めるようにジロジロと見ながら言われる。

私たちを避けるようにして通り過ぎていく生徒が、〝可哀想に〟とでも聞こえてきそうなほど同情の眼差しを送っていた。

『幼なじみだかなんだか知らないけど、郁巳が気をかけてくれるのを当たり前ーみたいな顔してて、そういうのイラッとするんだよね。やめてくれない?』

『……はぁ』としか答えられずにいると、次々と言葉を投げつけられる。

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