過保護な彼に愛されすぎてます。


『そうそう。アンタと並んでると郁巳の価値が下がっちゃうって自分でもわかるでしょ? 本当は郁巳だって迷惑してるのに気付かないとか、相当イタイよ』
『男に飢えてるなら、適当なの紹介してあげるからさ。どういうのが好きなの? 言ってみなよ。やっぱりアンタみたいに普通で、なにもかも平均レベルの冴えない男が――』

そこまでペラペラと言っていたのに、急に黙るから不思議に思っていると。
背中に、トン……となにかがあたった。

振り返ると、そこには誰かが立っていて……見上げて驚いた。
郁巳くんが、あまりに怖い瞳をしていたから。

一瞬で空気が凍りついたみたいに、ピリピリとしていた。

『なに? 俺に聞かれちゃマズイ話?』

いつもは明るい声が、音程を少し下げている。

口元は笑っているのに、瞳は無表情で、〝あ、これは相当怒ってる〟っていうのがわかった。

見下すような眼差しが、女の子たちを冷たく捕えていた。
郁巳くんは、はぁーっとわざとらしいため息を落としてから言う。

『女って、本当にくだらないよね。俺の価値が~とか、俺が迷惑してる~とか。そんなもん、俺が決めることでアンタらが言うことじゃねぇってわかんねーの? だとしたら相当イタイね』

ハッと笑みを吐き出すようにした郁巳くんに、ひとりの女子が『だ、だって、郁巳がこの子ばっかり……』と言いかけると、郁巳くんは口元から笑みを消す。

『それさ、誰が名前で呼んでいいって言った? 馴れ馴れしいの、俺嫌いなんだよね。
それでも穏便にすませたいから放っておいたけど、挙句、調子に乗って奈央ちゃんにひどいこと言うんだから呆れる。
……奈央ちゃんに他の男紹介するだとか言った口、原形留めないくらいぐちゃぐちゃにしてやりたい』

突き放す声とひどい言葉に、女の子たちは怯えた様子で黙っていた。

守られている側の私でさえ怖いと思うのだから、その声と言葉を直接向けられているその子たちが何も言えないのも当たり前だ。

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