過保護な彼に愛されすぎてます。


郁巳くんは、私が離れていくのが怖いんだと思う。

過去、嫌な目に遭って、そのときから他人に心を閉ざしてしまった郁巳くんにとって、唯一、安心できるのが私だから。

でもそれはきっと、〝私だから〟ってわけじゃないし、私じゃなきゃいけないわけでもない。

誰か、郁巳くんを心から受け入れてくれるひとが現れれば――。
そんなことを考えながら、一軒目の雑貨屋さんを出たとき。郁巳くんが「んー……」と小さな声で唸った。

駅から、そんなに離れていないから、人通りは多い。
日曜日の十一時だっていうのに、みんな朝から動いてるんだなぁと感心してしまう。

「どうかした?」

見れば、困ったように眉を寄せているから不思議に思って声をかけると、郁巳くんはわずかに背後を気にした様子を見せたあと、言う。

「どうもつけられてるっぽいんだよね。マンション出たあたりから」
「え……ファンの子に?」

郁巳くんと一緒に外出すると、目ざといファンの子に声をかけられることも多い。
それを嫌がって、郁巳くんはいつも軽く変装していて、今日だってキャップに眼鏡姿だ。

それでも気づく人がいるんだなぁ……と考えながらも、どうしようかと思っていると、郁巳くんがため息を落とした。

「ここ二週間くらい、ポストにも変な手紙が入ってること多いし、マンションに出入りするときも視線感じたりしてたんだよね。
一回、ふざけんなって思って追いかけたけど、見失っちゃってさ。
でも、直接なにかしてくるわけではなさそうだし、事務所には一応報告だけして放っておいたんだけど。たぶん、その人かな」

〝二週間くらい〟という言葉に、あ、と思い口を開く。


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