過保護な彼に愛されすぎてます。
地を這うような声。
未だ、腰を抜かしたまま声も出せない犯人は、震えながら首を縦にコクコクと振った。
この人は……ここまでされるようなことをした?と、ふと疑問に思う。
ただ、郁巳くんが好きで、でも少し度を超えてしまって……。
手紙とか、家まできて付け回すとか、ストーカーとして訴えられても仕方ない行為だし、郁巳くんが表情を陰らすのが嫌で、私だって頭にきて追いかけてしまったほどだ。
それをわかっていても、犯人のあまりの震えようを見ると、やりすぎなんじゃないかと思ってしまう。
だって……追い回すほど好きだったハズなのに、今、犯人の瞳には恐怖しか浮かんでいない。
「奈央ちゃん」
不意に名前を呼ばれて顔をあげると、郁巳くんが私を見ていた。
相変わらず表情のない瞳にギクリとする。
「手、見せて」
「……手? あ……」
なんで……と思い、両手を広げてみると、左の手のひらが切れ、血が一筋流れていた。
さっき、尻もちをついたときに擦り切れてしまったのかもしれない。
「それ以外は大丈夫? 腰とか打ってない?」
しりもちをついたせいで汚れていたのか、郁巳くんが私のワンピースをポンポンと叩き汚れを払ってくれる。
「うん……大丈夫」
お尻も少しジンジンするけど、問題ない。手だけだ。
今までは痛いともなんとも思わなかったのに、気付いた途端ビリビリとわずかな痺れまで感じるから不思議だ。
郁巳くんは、私の左手首を掴むと傷を見つめ、ツラそうに表情を歪ませる。
それから私の手を引き、すぐそこにあった小さな公園のなかに入った。
それを見ていた犯人が、震える足で立ち上がりなんとか走っていく。
それこそ、殺人犯からでも逃げているように必死に。
郁巳くんはそんなの気にする様子も見せずに公園の水道まで行くと、蛇口をひねった。