過保護な彼に愛されすぎてます。


私の両肩を持ち、立ち上がらせた郁巳くんは、ふらりと前に進み犯人の目の前に立つ。

それから、焦っているような、喜んでいるような、どっちつかずの反応をする犯人に向かって拳を振り上げた。

ガ……ッと鈍い音が、静かな路地に落ちる。
あまりにためらいなく殴るものだから、一瞬、なにが起こったんだか理解できなかった。

殴られた衝撃で、犯人が後ろに投げ飛ばされたのをぼんやりと眺めてから、ハッとして郁巳くんに走り寄る。

「郁巳くんっ、暴力は――」
「アンタさぁ、俺が好きなんだろ? だったら嬉しいよね。毎日飽きもせず追い回すくらい大好きな俺に殴ってもらえて」

低く静かな声だった。

怒鳴ったわけじゃないのに、それ以上の威圧感を感じたのは、犯人も同じだったみたいだ。
郁巳くんのファンだっていうのに、まるで凶悪犯でも見るような怯えた瞳をしているから。

座り込んだまま、立てた膝を奮るわせ、完全に腰が抜けてしまっている。

「どうせならさ、一生消えない傷、残してあげようか。俺って結構ファン思いだから、アンタが望むならそうするけど……どうする?」

笑みを浮かべる口元。笑っていない、瞳。
どこまでも冷たい横顔に驚き、声をかけるのすら忘れてしまっていた。

郁巳くんが見据える先で、犯人はふるふると、やっとって感じで首を振る。

それを見た郁巳くんは「あっそ」と吐き捨てるように言ってからスマホを取りだし、座り込んだままなにもできない犯人を写真に収める。

「今まで届いた気持ち悪い手紙と一緒に、警察に届けとくから、せいぜい頑張って逃げれば。で、そのツラ、二度と見せんじゃねぇ」


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