過保護な彼に愛されすぎてます。


それから、冷凍庫にストックしてあるトマトクリームパスタを取り出して、レンジに入れた。

郁巳くんがいないときには結構お世話になっている冷凍食品だ。

休みの日ならまだしも、平日仕事終わりにご飯を作る気にはなれない。
……そんなことを堂々と言ったら、郁巳くんに怒られるから言わないけど。

五分ほどしてピーピーと電子音を鳴らしたレンジから、パスタを取り出してお皿にあける。
それを、カウンターテーブルに置き、テレビをつけた。

映っているのは、クイズ番組。
いつもは郁巳くんと並んで座る椅子に、ひとりで座る。

やけに静かに感じる部屋に流れてくる、賑やかなテレビの声。

いつもとはあまりに違う食事風景に違和感を覚える。
それだけ、郁巳くんが私の生活に入り込んでいるってことなのかもしれない。

テレビの音をBGMにパスタを食べていて、不意に聞こえてきた名前に思わずテレビを見た。

『真野さんは、メンズ誌でも活躍中だそうで』
『ええ。メンズのファッション誌に出していただくようになってから、男性ファンも増えて本当に嬉しいです』

にこりと上品な笑みを浮かべる真野さんを、ぼんやりと眺めて……本当に人気なんだなと思う。
お昼の番組にも出てたのに、夜もだなんて。

今頃、郁巳くんはこの綺麗な人と一緒なんだろうなと思う。

今見ているこれは収録だから生じゃない。
午後放送してたのは生だから、あのときは一緒に居て、そのまま今も一緒に……。

そんなことを頭のなかでダラダラと考えていたら、また胃の辺りに鈍いんだか鋭いんだかよくわからない痛みを感じて、眉を寄せた。

お昼のよくばりオムライスが響いてるのかな。
だとしたら、これを食べ終わったら胃薬を飲んだ方がいいかもしれない。

あー……でも、胃薬なんて一人暮らしを始めた時にそろえたままだ。
とっくに使用期限を過ぎてるし処分しないと。


< 62 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop