過保護な彼に愛されすぎてます。


「諦めて、俺を受け入れて。その代わり、奈央ちゃんが望むことはなんだってしてあげるから」

カシャン、と今ふたりの周りに下りてきた檻。

狭いそこには、想いが凝縮されどこまでも甘く……どこまでも――。

「好きだよ、奈央ちゃん」

誰よりも美しい、まるで彫刻みたいな微笑み。
柔らかく響く声。

「奈央ちゃんだけが大事だし、愛してる。だから俺を全部、受け入れて」

ガチャっと音を立てて、檻の鍵がかかった気がした。


「私も」
「え?」
「私も、郁巳くんのこと……」

〝愛してる〟なんて言葉は恥ずかしくてごにょごにょ言う。
でも、無事伝わったみたいで、郁巳くんが真っ赤に染まって言葉を失ったから、まぁいいかと思い、続けた。

「でも、あんまり狭い場所に閉じ込められたり、生活に支障がでるくらいに束縛されたら、いつか気持ちも変わっちゃうかも」

真っ赤だった郁巳くんの顔色が白くなる。

空気が重くなる予兆。
郁巳くんに、無感情の狂気が覗く前に笑いかけた。

「ずっと郁巳くんのこと好きでいたいから。郁巳くんも、そのために協力してね?」

手をキュッと握りながら言うと、郁巳くんは戸惑いを表情に浮かべながらも微笑む。
どうやら、成功したらしい。

「もしかして、俺に首輪つけるつもり?」
「ああ、いいかもね。暴れられたら困るし」
「えー……んー、まぁ、奈央ちゃんになら首輪つけられるのも興奮するけど……」
「心の底から気持ち悪い」

冷たくあしらうと、郁巳くんは納得いかなそうに眉を寄せた。

「でも俺、奈央ちゃんが俺を一番に考えてくれさえすれば、暴れないのに……。だいたい、俺はただ奈央ちゃんが好きすぎるだけだし、奈央ちゃんがそれをしっかり受け止めて同じように想ってくれさえすればなんの問題も……」
「はいはい。とりあえず、〝待て〟から始めよっか」

誰よりも愛しい、この狂犬は一筋縄ではいかなそうだけど。

ふてくされたように口を尖らす横顔を見て、ふっと笑みをこぼした。







END


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