君を愛さずには いられない
志穂は笑い上戸だ。

笑いすぎて息をハアハアさせていた。

俺は缶をサイドテーブルに置き

志穂に覆い被さった。

「何がそんなに可笑しいんだ?」

彼女は涙目でまぶたをパチパチとしばたいた。

「クスクス。」

まだ笑い止まぬ可愛い唇を奪った。

その唇からトロけるような甘い声が漏れた。

そっと離すと口をへの字に曲げた。

「キスが苦い。ビールの味がするじゃない。」

「悪い。ビールは苦手だったな。」

「いいよ。気にしなくて。もっとしてほしいから。」

「志穂。」

「ん?」

俺は彼女のダークグリーンにとび色の飛沫がチラチラしている瞳を見つめながら言った。

「最初から俺のものにしようと思っていた。俺はどうしてもおまえを愛さずにはいられない。」

「なにそれ、くっさい台詞。ラブに関してお子ちゃまな仁には似合わないよ。」

俺は大真面目に心からそう思って言ったんだ。

なのに

こいつはズバッと切り返してきた。

いつものごとくだ。

俺は彼女の前髪を優しくかき上げながら静かに言った。

「俺はおまえよりデリケートなんだよ。」

「それもウソっぱちよ。」

俺はハァとため息をついた。

「そういう言い方、相手が傷つくと思わないのか?」

「仁に関してはあり得ないと思う。」

「なんでだよ?」

「仁はMっ気がある。こんな風に責められたいとあなたが私にそうさせているからよ。私は本当はこんな女じゃないんだからね。」

「じゃ、どんな女なんだ?」

「しとやかで物静かで賢くて優雅なんですから。」

「ぷっ、あっはっは!」

今度は俺が大笑いする番だった。


    ~ 完 ~


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