◆Woman blues◆
◆◆◆◆◆◆◆◆

二時間後。

私はシャワーを浴びながら、あの多国籍居酒屋での怜奈ちゃんの言葉を思い出した。



「私が思うに、鮎川さんはSLCFの社長令嬢と浮気してるんじゃなくて、アステリのレセプションパーティに行くつもりだったんだと思いますよ」

「アステリの?」

「はい。先週の土曜日は夜からアステリのレセプションパーティでした。親友がアステリの店員なので確かな情報です。それにSLCFの社長令嬢のリアナさんはアステリのモデルでもありますし、出席情報はホームページに記載されてました」

『アステリ』とは、老舗レディースシューズの専門店だ。

私もアステリのハイヒールを持っている。

日本製で、メンテさえすれば長く履けるアステリのハイヒールは、私のお気に入りだ。

細かなデザインにも対応してくれるし、なによりオーダーメイドだというのがいい。

「そのアステリの青山店が、この度店舗拡大に伴う移転で、しばらく休業だったんですけど、来週の土曜日にリニューアルオープンする予定なんです。わが社が、レディースシューズ部門を新に設けるという噂が本当だとしたら、鮎川さんはレセプションパーティにリアナさんと出席する予定だったんじゃないですか?そこで靴業界における何らかの繋がりを得るために」

「……そうだったんだ……」

怜奈ちゃんの話を聞いているうちに、身体がカアッと熱くなった。

太一を責め、聞く耳を持たず、関係を解消しようとした自分が浅はかで恥ずかしかった。

今ここに座っていることにすら、罪悪感を覚える。

同時に、どうして私に内緒で出掛けようとしたのかが、引っ掛かる。

恋人同士なのに。

ちゃんと言って欲しかった。

黙り込んだ私の顔を、怜奈ちゃんが覗き込んでニヤニヤと笑った。
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