◆Woman blues◆
「夢輝さん!」

うるさい、呼ぶなっ!

もう、何でこんな事になってんの。

なんで鬼ごっこみたいに追いかけ回されてんの、私。

「待てって言ってるだろ!!」

階段の入り口で後ろから抱きすくめられ、今度は到底逃げられそうになかった。

筋肉の張った太一の腕と、熱い彼の身体。

それらとさっきのリアナさんの姿が頭の中をグルグル回り、目眩がしそうだった。

「もう逃げないでください」

言うなり太一は私を担ぎ上げた。

嘘でしょ、苦しい!

お姫様抱っこには程遠く、二つ折りにされて肩に担がれ、私は思わず太一の背中を殴った。

「やだ、降ろしてっ!」

「ジタバタしても無駄です。僕の部屋に着くまでは降ろさない」

「バカッ!太一なんか嫌い!」

「嘘つけ」

いつもよりもやや乱暴な言葉遣いは、よほど私に腹をたてている証拠なのだろう。

「降ろしてっ!降ろしてってばっ!」

叫んでも太一は本当に、部屋に着くまで私を降ろさなかった。

「うるさい口は……塞いでしまうに限る」

「ん、あ、」

降ろされた途端に玄関の壁に押し付けられ、私は太一に唇を奪われた。

乱暴で、貪るようなキスだった。

なのに、どこかいとおしむようなキス。

一本一本、私の指に自分の指を挟み込むようにしながら、太一は優しく手を繋いだ。
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