◆Woman blues◆
飲み足りない。

泥酔でもいいから、眠りたい。

面倒だと思いながらも、私は薄く化粧をした。

このときの私は、部屋を出てすぐに後悔するはめになるなんて、想像すらしていなかった。

エレベーターのドアが開いたと同時に、その瞬間はやって来た。

徐々に開いていくドアの中に、太一がいた。

しかもリアナさんと。

たちまち、せり上がってくるような冷たさを身体に感じ、私はクルッと踵を返すと部屋へ引き返そうとした。

ガタン!と無理矢理扉に手をかけたような音と、

「待って、夢輝さん!」

太一の焦った声が辺りに響いた。

なんて残酷なの。

この状況で呼び止めないでよ。

みるみる太一の足音が私に追い付いて、後ろから腕を掴まれてしまった。

「離してっ!」

「ダメだ、離さない」

「彼女、帰っちゃうわよ」

「話は終わったからいい」

「私達、話なんかないんだから離して」

思いきり腕を振り回すと、太一の手が外れたから、私は素早く彼の脇をすり抜けた。

どうせ部屋に戻っても、鍵を取り出す前にまた捕まる。

私は非常階段を目指すと走り出した。
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