◆Woman blues◆
そう言ってチラリと私を見る。

交差点を指差すと、隆太は私を見下ろして言った。

「俺、ここ渡った先なんだ。夢はもうマンション見えてるから平気だよな」

「あ、じゃあ代わりに僕が送ります。方向一緒なんで」

…………。

「じゃあまたね、隆太」

「おう」

隆太が交差点を渡っていくのを見てから、私は太一を見上げた。

「なんとなく、言わない方がいいかなー、なんて」

「同じマンションだって事?」

「はい。てゆーか、大分飲みました?
飲み足りないなら、一緒にどうですか?」

「めちゃくちゃ飲んだから、今日は遠慮しとくよ。ありがと」

私がそう言うと、太一は少し残念そうに笑った。

「今から家で独り飲み?」

私が尋ねると、太一はニコニコと笑った。

「夢輝さんと二人が良かったけどなあ」

……またアラフォーをからかうんだから。

「帰るよ」

「はい」

◇◇◇

マンションに到着し、エレベーターを待っている時、太一が私を見て口を開いた。

「あの……遠藤さんって……」

その時、反射的に私は硬直した。

だって、扉の開いたエレベーターから秋人が降りてきたから。

秋人は私を見てから表情を変えずにポケットを探った。
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