◆Woman blues◆
私の唇に。

斜めに顔を傾けて、瞳を伏せた太一は凄く素敵で、爆発しそうなほど私の心臓は煩かった。

唇を離すと、太一は私の額に自分の額を押し付けて囁いた。

「夢輝さんが可愛いから、つい」

「……」

頬が熱かった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆


週明けから太一は毎朝、私の部屋に迎えに来た。

定時後も一緒に帰ろうとするからついに怜奈ちゃんが、

「鮎川さんと夢輝さん、付き合ってるんですか?」

なんてドストレートな質問をしてくる始末。

こう訊かれるともう、確実に自虐を交えた返答がお決まりとなる。

こちらを見つめる太一をさりげなく視線で牽制しながら、私は怜奈ちゃんに笑って答えた。

「やだなあ、怜奈ちゃん!鮎川君に失礼だよ。私みたいなアラフォー、だーれにも相手にされませんよー」

怜奈ちゃんは大袈裟に口を尖らせてみせた。
 
「だけど夢輝さんって、モテるじゃないですか!工場長だって、夢輝さん狙いだって裕也が言ってましたし。彼氏がいたってイイ女はイイ女だし」

裕也君とは怜奈ちゃんの彼氏で、工場長……つまり隆太の部下だ。

「なに?!遠藤工場長って、柴崎チームリーダーの事、狙ってるの?」

三歳後輩の南さんが、ランランと瞳を輝かせ始めた。
< 66 / 143 >

この作品をシェア

pagetop