◆Woman blues◆
怜奈ちゃんは、噂の当人である私を差し置き、大きく頷いた。

「かなりセクハラですけど、女子社員の中で誰がいいかを酒の肴にしながら飲んでたら酔った工場長が、『夢輝!』て叫んだらしいですよ」

私は内心舌打ちした。

もぉー、隆太ったら!

「それで、裕也が」

私は堪らず帰り支度をしながら盛り上がる面々に声をかけた。

「工場長はね、ほら、私と同期だからさ、誰にも人気のない私を不憫だと思っただけだよ」

って、我ながらナチュラルな言い訳を思い付いたと思った矢先、

「夢ー?」

オフィスの入り口からハッキリした低音で、誰かが私を呼んだ。

私と太一を含めた全員が入り口を見つめ、そこに隆太の姿を発見した皆が、途端に私を見てニヤつく。

「やだあ、デートなんですかあ?」

「いや、そうじゃなくって」

「夢、飲みに行こうぜ」

ば、ばかっ!

「工場長!夢輝さんには婚約者がいるんですからね!わきまえてください!」

私は焦った。

皆にはまだ、婚約が白紙になったことを話してなかったのだ。

「怜奈ちゃん、あのね」

「なんだよ、裕也のカノジョ!夢はな、あのインテリと別れたんだよ。だから今は誰のもんでもねーんだよ」
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